築35年以上の両親と住む自宅マンションのエコリフォームの設計をしました。
マンションは戸建に比べると夏涼しくて冬は暖かいですが、南北の温度差は大きく、冬の北側の洗面所や部屋はとても寒いです。
そんな「熱環境を改善すること」「脱原発を目指して、電力の使用量を減らすこと」「間取りとモノを整理して、すっきりさせること」以上の4つを目標として、リフォームを行いました。
今回は、施主、設計者、住まい手とすべての役割を体験することで、新たな気付きとともに、事後検証も可能となりました。
検証結果はこちらから
1. 冬の室内
2. 電気の使用量(冬)
3. ソーラー換気の効果
4. 春から秋へ
第30回住まいのリフォームコンクールで
「一般社団法人リフォーム推進協議会会長賞」を受賞しました
詳細はコチラ ⇒
使った材料や工夫した点、工事中の様子
<改修前>
築35年以上のマンション。南に2室とベランダがあり、北側には外廊下に面した室が1つと、玄関とお風呂場がある一般的な間取です。
<解体>
コンクリートの躯体が見えるまで、配管設備、内装すべてを撤去しました。躯体以外はすべて新築と同様に工事します。
<断熱改修>
外気に接する壁・床・天井には、羊毛とリサイクルカーペットによる断熱材を。通気のとれない壁内で内部結露を防ぐために、吸放質性のある断熱材を選択。断熱材とはいえ素材は羊毛のセーターと同じ。扱いやすいので工事中も火災の時も安心に思えます。
<改修中>
コンクリートのマンションですが、杉の柱を使い、木造の大工さんが施工します。震災後の日本全体へのエールも込めて、可能な範囲で日本で生産、製造している材料を使います。
<仕上げ>
夏の暑さに弱い両親のために、壁・天井は火山灰による塗り壁。夏の除湿効果が高く、室内がさらっと快適になるとか。自然素材による現場は、化学臭がなく、不快感がありません。集合住宅などの改修では、周囲に迷惑をかけないので、オススメです。
<仕上げ>
夏の風通しを考えて、すべての扉を引き戸に。夏は、南から北まで全室がつながります。扉は国産杉の間伐材を積層したJパネルを使用。厚さ4cm弱の1枚板による扉なので、閉じたときは壁のような安定感があります。
オススメ改修ポイント!<玄関の風除室(暖房区画)>
マンションの玄関は、北向き・鉄扉というのが一般的で、マンションの寒さのほとんどはこの玄関からの冷気と考えられます。
改修前は、玄関と南側の居室をつなぐ廊下の真ん中に戸があり、北側の洗面所、居室は寒いエリアでした。
リフォームに際して、玄関に三枚引き戸を設置して冷気をシャットアウト。玄関は少し狭くなりましたが、洗面所まで暖かくなり、家全体の温度差がなくなりました。
実験的試み!ソーラー換気<小型太陽光発電パネルによる換気システム>
多くの人が集合住宅に住んでいます。そこで、分譲マンションの改修でも取り入れられる自然エネルギーの活用を試みました。
アンテナ程度の大きさのPVパネルを設置し、小さな送風機に直接つなぎます。晴れているときには小さな送風機が回転し、南側の食堂の暖気を、北側の洗面所にひっぱります。食堂の取入口と洗面所の吹出口は床下の断熱ダクトでつながっています。
電力は、電磁気現象を利用しては運ばれた「動力」です。羽を動かす動力として利用するのが、素直で単純な使い方ではないかと考えました。
展開としては、小型の蓄電池を設置して、災害時に携帯電話や電池の充電ができるようなことを考えています。
とにかく誰もが気軽に設置できて、普段も利用しながら災害時の安心を担保するといったイメージの試みです。
このシステムを提供してくれたのは、
その名もソーラー・カンキ社
「ソーラーパネルで発電した電力を換気に使う!」ことをポリシーにしている技術者の方です。